コンピュータ画像の歴史:CRTからJPEG、生成AIまで
CRT上の点からリアルタイム描画と生成画像まで、デジタルイメージング約80年の主な転換点を振り返ります。
目次
スマートフォンでHDR写真を撮影し、高解像度動画を再生し、数秒で画像を生成できるのは、表示装置、画像の標本化、圧縮、GPU、機械学習が段階的に発展してきたためです。
この記事では、初期のCRT出力とデジタルスキャンから、JPEG、PNG、WebP、コンピュテーショナルフォトグラフィー、生成AIまでを時系列で整理します。それぞれの技術が何を解決したのかに注目します。

デジタルビジョンの夜明け:1940年代-1960年代
1947年、マンチェスター大学ではFreddie WilliamsとTom Kilburnが、記憶装置として使われた陰極線管上の点を観察していました。これは写真や絵ではありませんが、コンピュータ内部の状態を視覚的に読み取る初期の例でした。
その後、MITのWhirlwindコンピュータでは、計算結果をCRTへリアルタイムに表示する仕組みが開発されました。画面上の光点を通じて機械の状態を確認できるようになり、コンピュータと視覚的に対話するための基礎が形づくられました。
1950年代には、Ben Laposkyがオシロスコープとアナログ回路を使い、「Oscillons」と呼ばれる抽象的なパターンを制作しました。当時は画面の内容を画像ファイルとして保存できなかったため、CRTを写真に撮って作品を記録していました。
1963年、Ivan SutherlandはMITでSketchpadを開発しました。ライトペンで画面上に線や円を描き、図形同士に制約や階層を設定できるシステムです。後のCAD、グラフィック編集、GUIへつながる考え方を早い段階で示しました。
ピクセル革命:1970年代
コンピュータで画像を扱うには、連続した明暗や色を離散的な値へ変換する必要があります。Russell Kirschらは1957年、写真を176×176画素で走査し、デジタル画像として記録しました。
1970年代には、画像を画素の格子として扱うラスター方式が広がります。解像度と色数を決めれば画像を数値として保存できますが、当時はメモリ容量と表示装置の制約が大きく、限られた資源でどう表現するかが重要でした。
グラフィックス端末は急速に成熟しました。Tektronixの4010シリーズは、常にリフレッシュすることなく画像を保持できるストレージチューブを導入し、エンジニアリングや科学的な作業に実用的になりました。イリノイ大学のPLATO教育システムは、学生が化学シミュレーションから最初のグラフィカルソーシャルゲームまであらゆるものに使用した、黒い背景に対して明るいオレンジ色のグラフィックスを表示するプラズマディスプレイを備えていました。
1972年、Ed CatmullとFred Parkeはユタ大学で、手の3Dモデルを使ったアニメーションを制作しました。後にPixarを共同設立するCatmullのこの研究は、コンピュータグラフィックスによる立体表現とアニメーションの初期事例として知られています。
Apple II(1977)などのパーソナルコンピュータが登場すると、グラフィックスは研究機関や企業だけのものではなくなりました。解像度や色数は限られていましたが、家庭や学校でも図形やゲームを画面に表示できるようになります。
標準化と爆発:1980年代
1980年代には、表示規格と画像形式の標準化が進みます。IBMが1987年に導入したVGAは、PC向けソフトウェアが想定できる共通の表示環境を広げました。
画像の保存と交換にはファイル形式が必要です。ZSoftのPCXやMicrosoftのBMPなどが使われ、画素データをアプリケーション間で受け渡せるようになりました。BMPは構造が比較的単純な一方、圧縮されないデータでは容量が大きくなります。
CompuServeが1987年に公開したGIFは、LZW圧縮によって限られた通信帯域でも扱いやすく、オンラインサービスで普及しました。後にアニメーションや単純な透過にも使われます。1フレームで扱える色は256色ですが、当時の表示環境には実用的でした。
グラフィカルユーザーインターフェースはAppleのMacintosh(1984)とMicrosoft Windows(1985)で成熟しました。突然、コンピュータは常にウィンドウ、アイコン、ボタン、メニューを描く必要がありました。この需要はグラフィックスハードウェアのイノベーションを推進し、視覚的インタラクションを贅沢品ではなく期待される規範として確立しました。
3次元グラフィックスは研究室から商用製品へと移行しました。Silicon Graphicsは専門的なアプリケーション向けにリアルタイム3Dレンダリングが可能なワークステーションを導入しました。10年代末までに、消費者レベルの3Dアクセラレーションが登場し始め、来るべきゲーム革命を予告しました。
Web時代:1990年代
1992年に標準化されたJPEGは、写真を実用的な容量で保存・送信するための重要な形式になりました。離散コサイン変換などを用いる非可逆圧縮により、画質と容量のバランスを調整できます。
JPEGでは、人の目が変化に気づきにくい成分を減らして容量を抑えます。品質設定を下げるほど小さくできますが、ブロック状のノイズや輪郭のにじみが目立ちやすくなります。写真や連続階調の画像に向く一方、文字や細い線には不向きです。
しかしJPEGはすべてを処理できませんでした。鋭いエッジ、テキスト、または限られた色を持つグラフィックスは、JPEGの有損圧縮で目に見えるアーティファクトを発生させました。GIFフォーマットはこれらのニーズに対応しましたが、UnisysがLZW圧縮の特許を施行し始めたときに危機に直面しました。
GIFで使われていた圧縮方式の特許問題を背景に、PNGが1996年に勧告されました。可逆圧縮、より多い色、段階的なアルファ透過に対応し、ロゴ、アイコン、スクリーンショットなどで広く使われるようになります。
World Wide Webの普及により、画像は多くの人が日常的に閲覧・共有するデータになりました。ダイヤルアップ接続では数キロバイトの差も待ち時間に影響するため、画像の圧縮と最適化が重要になります。アニメーションGIFも初期のWeb表現として広まりました。
1990年に発売されたAdobe Photoshopなどの画像編集ソフトにより、レイヤー、フィルター、マスクを使う制作環境が一般のコンピュータへ広がりました。撮影後に画像を加工・合成するワークフローも定着していきます。
デジタル写真の成熟:2000年代
2000年代にはデジタルカメラが一般家庭へ普及し、携帯電話にもカメラが搭載されるようになりました。撮影枚数が増えるにつれ、画質だけでなく、画像の整理、検索、バックアップも課題になります。
写真制作では、センサーから得た情報を多く残すRAW形式が使われます。JPEGより容量は大きくなりますが、撮影後に露出、ホワイトバランス、色を調整しやすい点が特徴です。CanonのCR2、NikonのNEF、SonyのARWなどメーカー独自形式があり、共通形式としてDNGも利用されています。
撮影枚数の増加に伴い、画像を整理するメタデータも整備されました。EXIFにはカメラ設定、撮影日時、位置情報などを記録できます。IPTCはキャプション、キーワード、権利情報に使われ、XMPは拡張可能なメタデータの記述方法を提供します。
High Dynamic Range(HDR)イメージングが登場し、写真家はどのカメラのネイティブ能力も超えるシーンを捕捉しようとしました。同じシーンの複数の露出を組み合わせることで、HDR技術はシャドウとハイライトの両方のディテールを保持できました。専門的な技術として始まったものは、最終的に標準的なスマートフォン機能になりました。
現代:2010年代から現在
Googleが2010年に発表したWebPは、非可逆・可逆圧縮、透過、アニメーションに対応します。ブラウザ対応の拡大に伴って、Web配信でJPEGやPNGと併用されるようになりました。実際の圧縮効果は画像と設定によって異なるため、画質を確認しながら使い分けます。
Appleが2017年にiOSで採用したHEIFは、高効率な圧縮に加えて、複数画像、深度情報、画像シーケンスなどを一つのコンテナで扱えます。一方、Webや他のアプリケーションへ渡す際には、JPEGやPNGへの変換が必要になる場合があります。
AV1の技術を基にしたAVIFも、Web向け画像の選択肢として使われています。写真で容量を抑えられる場合がありますが、エンコード時間、制作ツール、配信先の対応状況を確認する必要があります。
SVGがブラウザで広く利用できるようになると、ベクター画像はレスポンシブなアイコン、ロゴ、UI素材で使われるようになりました。XMLベースの構造を持つため、CSSでスタイルを変更し、JavaScriptから要素を操作できます。
GPUの性能向上は、ゲーム、映像制作、科学可視化を変えました。WebGLによってブラウザでもGPUを使った3D描画が可能になり、レイトレーシングなど計算量の多い処理もリアルタイム用途へ広がっています。
フロンティア:AIとその先
現在は、DALL-E、Midjourney、Stable Diffusionなどのモデルが、テキスト入力から画像を生成できます。カメラで現実を撮影するのではなく、学習データから得たパターンに基づいて新しい画像を合成する点が、従来のデジタル撮影と異なります。
生成画像が自然になるほど、画像の出所や編集履歴をどう示すかが重要になります。透かしやメタデータだけでなく、制作・公開の過程を含めた確認方法が求められます。
ニューラルネットワークを使った画像圧縮も研究されています。画像の特徴に合わせた表現を学習できる一方、エンコードやデコードに必要な計算量、互換性、標準化が課題です。
スマートフォンのカメラでは、複数フレームの合成、被写体の推定、HDR処理などが撮影時に自動で行われます。画像は一度の露光だけで決まるのではなく、センサー、レンズ、画像処理、機械学習を組み合わせて作られるようになりました。
拡張現実と仮想現実は全く新しいイメージングパラダイムを要求します。ライトフィールドカメラは方向性光情報を捕捉し、撮影後のフォーカス調整を可能にします。ボリュメトリックビデオは真の360度視聴のための3次元シーンを捕捉します。ホログラフィックディスプレイは大部分が研究プロジェクトのままですが、商業的な実現可能性に向かって進んでいます。
まとめ
CRT上の光点から生成AIまで、コンピュータ画像は表示、記録、圧縮、処理の技術を重ねながら発展してきました。新しい形式が登場しても、古い形式がすぐに消えるわけではありません。画質、容量、編集性、互換性という異なる要件に応じて併用されています。
形式を選ぶときは、単に新しさや圧縮率だけで判断せず、どこで表示し、どこまで編集し、誰へ渡すかを確認することが大切です。WebではJPEG、PNG、SVG、WebP、AVIFを内容と配信先に応じて使い分けます。
用途別の選び方は画像フォーマット完全ガイドで整理しています。ベクター画像の仕組みはSVG完全ガイドをご覧ください。